ドワルテ議長様並びにご列席の各国政府代表の皆様、私は長崎市長の伊藤一長です。今回、皆様方のご協力により、このような貴重な場をお借りして発言の機会を頂きましたことを心から感謝申し上げます。
私は、核兵器による惨禍を体験した長崎市民を代表して、また平和市長会議の代表として申し上げます。
今から60年前、一発の原子爆弾により長崎のまちは一瞬にして破壊されました。爆心直下の地上では、すさまじい熱線により三千度を超える高熱となり、猛烈な爆風は爆心地から1キロメートル離れた所で秒速160メートルにも達しました。
皆さん、この写真をご覧ください。これが原爆がもたらした現実です。地上に横たわる黒焦げの少年です。この少年にいったい何の罪があったのでしょうか。長崎原爆の被害は死者7万4千人。負傷者7万5千人。かろうじて生き延びた人々も心と身体に癒すことのできない傷を負い、今なお苦しみ続けているのです。
核兵器は、無差別・大量殺りく兵器であり、しかも後々までも原爆後障害によって人間を苦しめ続ける非人道兵器の最たるものです。皆さん、このような惨劇が自分たちの身の上に起こることを想像してみてください。私はいかなる理由があってもこのような核兵器の存在を許しません。
私たち長崎市民は、このような惨劇を二度と繰り返してはならない、長崎を最後の被爆地にしなければならないとの強い思いで、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を世界に向けて訴え続けています。
国際社会では、1996年に国際司法裁判所によって、「核兵器による威嚇と使用は、一般的に国際法に違反する」とした勧告的意見が出され、核兵器の違法性が断罪されました。また、核保有国は2000年の再検討会議において、「核兵器廃絶の明確な約束」を合意しました。しかし、CTBTは発効の目途さえたっておらず、カット・オフ条約の交渉は何の進展も見せていません。核保有国は核兵器に固執する姿勢を変えておらず、国際的な信義さえ無視するかのような態度を示しています。私たち長崎市民は、そのような核保有国の姿勢を断じて容認できないのです。
先ごろ、中央アジア5カ国と国連、とくにアジア太平洋平和軍縮センターの熱心な取り組みにより、中央アジア非核兵器地帯条約の仮署名が行われたと聞いております。非核保有国の長年にわたる地道な努力により、南半球ではすでにそのほとんどが非核兵器地帯化されております。アジア地域においても非核兵器地帯が拡大することに、私たちも大変勇気づけられております。日本は、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則を国是としており、また、韓国と朝鮮民主主義人民共和国は、「朝鮮半島非核化共同宣言」を行っています。3国による北東アジアの非核地帯化の実現に向けた基本的な条件は揃っているのです。私は、北東アジアの平和と安定のためには、この地域における非核兵器地帯化が大きく貢献するものと信じておりますので、皆様方のご協力をぜひお願いいたします。
世界には、今なお自国の安全のために核兵器が必要だと考えている人がいることを、私は大変残念に思います。しかし、世界中の市民は核兵器と人類は共存できないことに気付いています。
長崎では、高校生を中心に、原爆を知らない若い世代が平和について考え、核兵器廃絶へ向け自発的に平和運動に取り組んでいます。彼らの運動は、私たちの大きな希望です。私は、若い世代のこのような活動が、大きなうねりとなって世界に広がることを期待しています。
今回、この会議のため核兵器廃絶を願う世界中の市長、NGO、被爆者、研究者、マスコミの人々が大勢ニューヨークに来ています。彼らの声に耳を傾けてください。皆様方の賢明なる判断によって、このNPT再検討会議が、核兵器廃絶の具体的な道筋を示す会議となることを心から願っています。 |