爆発時の巨大なエネルギーは、地上のものを吸い上げ、吹きあげ、巻き上げて原子雲を立ち昇らせた。この原子雲は刻々と色と形を変えながら、ぐんぐんと上昇した。その上昇速度は次のようにみられている。
約0分30秒 |
3,000メートル |
約1分30秒 |
4,500メートル |
約2分30秒 |
6,000メートル |
約4分30秒 |
7,000メートル |
約8分30秒 |
9,000メートル |
原爆投下機の機長・スウィーニーは「垂直の雲は驚異的なスピードで上昇を続けており、その色はつねに変化していた」「上昇してきた雲が、7,500メートルの高度で白くきのこ状に膨らみ、さらに加速しながら上へ噴出を続け、9,000メートルにいた我々を追い越して、少なくとも14,000メートルにまで達した」とその手記に記している。
このきのこ雲は、近郊はもちろん遠く県外でも望見されたが、意外にも、爆心地に比較的に近い距離に居た者には、きのこ雲は見えなかったと証言する者が多い。
立ち昇ったきのこ雲の雲頂はやがて崩れ、次第に東方へ流れていった。雲の移動速度は時速約12キロメートルと推定されている。
原子爆弾の炸裂時の状況について、長崎県は『8月9日長崎市空襲災害概要報告書』に次のように記している。
『原子爆弾ノ炸裂ニ際シテハ先ズ強烈ナ一大閃光ガ迸バシリマシタ。ソレハ恰モ強烈ナ「マグネシウム」ヲ焚イタト同ジ様ナ感ジデ、アタリ一面ガ白茶ケテボンヤリ霞ンデ仕舞イマシタ。ソシテ爆発ノ中心部デハソレト同時ニ、又多少距離ノアル所デハ夫激ヨリ瞬時ノ後、猛烈ナ轟音ト共ニ強烈ナ爆風ト熱気トガ襲ウテ来タノデアリマス』 |