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長崎平和宣言

 一発の原子爆弾はすさまじい熱線と爆風、そしておそるべき放射線を放ち、無差別に人々を殺傷し、一瞬にしてまちを破壊しました。死者7万4千人、負傷者7万5千人。長崎はまさに原爆地獄と化しました。被爆者は、今なお心の傷を引きずりながら、原爆後障害や病気への恐れと不安に苦しんでいます。私たちは8月9日を永遠に忘れません。

  私たちは原爆の恐ろしさと戦争の悲惨さを忘れません。
  被爆から52年。原爆投下を正当化しようとする考えがいまだに存在することは、長崎市民にとって許しがたいことです。私たちはこれからも、原爆の恐ろしさと非人道性を強く訴え、「ナガサキを最後の被爆地に」との願いを世界の人々に訴えていきます。
  同時に私たちは、日本のアジア・太平洋諸国への侵略と加害の歴史を直視し、反省しなければなりません。今年は日本国憲法施行50周年です。憲法の平和理念の上に立ち、戦争の防止と人類の平和のためさらに努力します。

  私たちは臨界前核実験の中止と核兵器廃絶条約の締結を求めます。
  昨年9月10日、国連総会において、包括的核実験禁止条約が圧倒的多数で採択されました。この条約により、すべての核爆発実験が禁止されることは、核軍縮への重要な一歩であります。
  しかし、アメリカ政府は本年7月2日、かねて計画していた臨界前核実験を実施しました。この実験は、核爆発を伴わないものの、核兵器を保有し続けるための実験であり、「核抑止」政策に固執するものです。私たちは、世界の批判を無視して臨界前核実験を強行したことに強く抗議し、核兵器に関するあらゆる実験の中止を求めます。
  昨年7月8日、国際司法裁判所は「核兵器の威嚇と使用は一般的に国際法に違反する」との勧告的意見を発表しました。その後、かつて核戦略にかかわった科学者や旧政府関係者、退役将軍らによる核廃絶に向けた提言が相次いで出されました。核兵器廃絶を求める国際世論は大きな盛り上がりを見せています。今こそ核保有国をはじめすべての国々は、世界の声に耳を傾け、直ちに核兵器廃絶条約の締結に向け行動を起こすよう強く要請します。

  私たちは21世紀の平和の担い手たちに訴えます。
  若い世代のみなさん、原爆の被害や戦争の悲惨さについて学び、平和の大切さと命の尊さについて考えてください。そして、学校や家庭で積極的に話し合ってください。また平和を妨げている飢餓、貧困、難民、人権抑圧、環境破壊などの問題に関心を持ち、21世紀を平和な時代にするため、ボランティア活動など自分ができることから行動に移そうではありませんか。
  長崎市は、これからも原爆資料館と平和公園一帯を「ナガサキ平和学習」の場として活用し、被爆に関する証言、記録、映像など資料の収集・整備に努めます。また、国内外の青少年の平和交流と国際理解教育をさらに推進します。

  私たちは「ナガサキの声」を世界に発信し、平和のネットワークを広げます。
  長崎市民は、あの悲惨な被爆体験から、被爆の実相を「ナガサキの声」として世界に発信してきました。その間、世界では数多くの戦争や地域紛争が行われていますが、核兵器が使用されなかったことは、被爆地長崎をはじめ世界の人々の平和への願いの結集によるものと考えます。
  日本政府は、被爆国として毅然たる姿勢で、臨界前核実験に反対してください。また、非核三原則を法制化し、北東アジアの非核地帯の創設に積極的役割を果たすことを求めます。そしてすべての被爆者に手厚い援護の手を差しのべ、核実験や原子力発電所事故などによる世界の各被害者の救済・支援にも努力してください。
  国連には、21世紀の核兵器廃絶への道筋をつくるために、第4回国連軍縮特別総会を1999年に開催し、被爆都市の市長と被爆者代表に演説の機会を設けるよう要請します。
  長崎市は、当地で開催中の第四回世界平和連帯都市市長会議の参加者を初め、平和を願う世界の都市や非政府組織(NGO)と手を携え、反核・平和のネットワークを広げていきます。

  被爆52周年にあたり、原爆で亡くなられた方々のごめい福を心からお祈りいたします。ここに私は長崎市民の名において、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて、新たな気持ちでまい進することを国の内外に宣言します。

8月9日
長崎市長 伊藤 一長