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長崎平和宣言

 日本のみなさん、世界のみなさん、長崎の声を聞いてください。
 今、この地に立てば、47年前の悲惨な光景が見えてきます。燃ゆる大地、数千度の熱線、黒こげの死体、水辺で息絶える裸の人間、焼けただれた皮膚の少年、家も学校も工場も一瞬のうちに燃え尽き、倒れ、廃墟となりました。
 今日、原爆の日。亡くなられた被爆者のご冥福をお祈りし、平和の誓いを新たにするために私たちはここ爆心の地に集まりました。

1.日中戦争、太平洋戦争から長崎原爆までを考えよう
 我が国は韓国併合の後、日中戦争、太平洋戦争へ突入し、広島・長崎の原爆で敗戦となりました。
  私たちは、日本のアジア・太平洋への侵略・加害の歴史を振り返り、犠牲となった内外二千数百万人のご冥福をお祈りし、心からの反省とその償いを果たさなけ ればなりません。また、原爆によって膨大な数の方が亡くなり、今なお多数の被爆者が孤独、老齢、病弱、差別などで苦しみ続けております。
 私たちは今、過去をしっかりと見つめ、正義と人間愛が日本にも存在することを世界に示すべきであります。

2.二十世紀中に地球上から核兵器をなくそう
 長崎と広島の市民は、原爆投下のとき、これこそ人類を滅亡させる究極兵器であることをみました。それ以来、両市民は核兵器廃絶を世界に訴え続けてきました。
  今年6月、アメリカとロシアは大幅な核軍縮を目指すことで一致しました。ロシアとフランスは核実験の一時停止を表明しました。核軍縮の流れは大きくなりま した。しかし、核実験は続けられ、核抑止力に頼る考え方は変わりません。また核拡散、核兵器解体による膨大な核物質の危険は去りません。
 私たちは、核保有国が核兵器廃絶の第一歩として直ちに核実験の全面禁止を行うよう、また、新たに核兵器を持とうとする国が核超大国の過ちを繰り返さないよう訴えます。私たちは核兵器が21世紀に持ちこされることを決して許してはなりません。

3.原爆被爆者援護法の即時制定と外国人被爆者の援護措置を
 原爆による凶悪な大量虐殺は、人道上、国際法上許されない行為であります。日本政府は、サンフランシスコ平和条約によって対米賠償請求権を放棄しました。日本政府は、原爆被爆者に保証する義務があります。
 被爆者は被爆直後10年余、治療と救済を最も必要とするとき放置されました。再び戦争を起こさない決意の証しとして、国家補償の精神に基づき原爆被爆者援護法を即時制定しなければなりません。
 また、当時の朝鮮、中国の人たちや連合国の捕虜は強制連行され、非人道的扱いを受け、被爆して世を去り、あるいは帰国後原爆症や差別に苦しんでいます。私たちは、速やかに実態を調査し、謝罪し、援護をしなければなりません。

4.今、日本人と日本政府がなすべきこと
 私たちは、日本国憲法の平和原則を守り、戦争放棄、平和希求の精神を世界に示し、日本独自の国際貢献を考えなければなりません。
 日本政府は、アジア太平洋地域の信頼醸成と、この地域の非核化に真剣に取り組み、日本の国是である非核三原則の立法化を図らなければなりません。また、世界の核実験や原子力発電所の事故による放射線被害者の救済のために、日本に国際医療機関を設立してください。
  今日、大量殺りく兵器のために莫大な資金が使われている一方で毎年千四百万人の子供たちが栄養不良と病気で亡くなり、約十億の人々が飢餓に直面していま す。日本政府は、率先して世界に軍縮を訴え、軍事費削減によって生じる余裕を「平和の配当」として飢餓、貧困、難民、人権抑圧、環境破壊など人類が直面す る問題の解決に使うよう呼びかけてください。

5.未来を担う青少年のために
  教育に携わる皆さん。平和は私たちが子孫に残す唯一の遺産であり、核兵器廃絶こそ世界平和の第一歩であることを青少年に教えてください。青少年が現実の世 界を知るために、日本のアジア諸国に対する侵略・加害の歴史や世界の核兵器をはじめとする大量破壊兵器や武器の輸出入など、現代社会の情勢をよく教えるよ う努力してください。
 青少年の皆さん。現在の日本や世界の情勢をよく学び、世界の人々との理解と交流を深め、恵まれない人々に目を向け、人権を守り差別をなくすため、思いやりと勇気をもって行動してください。
 長崎市は、青少年のために広く平和について学ぶ機会を提供するとともに、青少年平和会議を開催するなど国内外の青少年の交流・学習を推進する平和希求プログラムを創設します。

 原爆被爆47周年にあたり、原爆犠牲者のご冥福と、ご遺族、被爆者のご健康をお祈りし、長崎市民が一体となり、平和な21世紀に向けて、核兵器廃絶と世界平和実現のため努力することをここに宣言します。

8月9日
長崎市長 本島 等