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長崎平和宣言

 日本のみなさん、世界のみなさん、ナガサキの声を聞いて下さい。
 きょうは悲しい長崎原爆の日。

1.原爆を忘れるな、戦争を忘れるな。
 我が国はかつて日韓合併の後、日中十五年戦争、太平洋戦争を戦い、長崎原爆を最後に敗戦となりました。内外二千数百万人の尊い生命を奪いました。私たちは戦争を心から反省し、犠牲となった多くの日本人と外国人のごめい福をお祈りし、その償いを考えなければなりません。
 長崎は今世紀最大の残虐な原爆によって一瞬にして廃墟と化しました。あの瞬間から膨大な数の方々が亡くなりました。今もなお多くの被爆者がケロイド、血液疾患、悪性腫ようなどの後障害のために苦しみ続けています。
 過去を反省することは、未来に平和を築くことであります。戦争の悲惨さと平和と人権の尊さを子供たちに伝えていこうではありませんか。

2.核兵器の廃絶を強く世界に訴えよう。
 核兵器は人類を絶滅させる最大の脅威であり、絶対悪であります。長崎は、核実験の即時全面禁止と核兵器の廃絶を訴えます。
 本年6月の米ソ戦略核兵器削減条約の基本合意、欧州通常戦力の削減交渉が行われるなど世界情勢は大きく動いています。
  しかし今日なお、核保有国は核抑止戦略を放棄せず、核実験は依然として続けられ、核兵器は高性能化されるなど核戦争に導く火種は後を絶ちません。特にアジ ア・太平洋地域に集中している海洋発射型の核ミサイルの削減については、今も楽観を許さない状況にあります。今こそアジア・太平洋地域の非核地帯化のため 日本政府の主体的、積極的な外交を望むものであります。

3.非核三原則の厳守を。
  核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという非核三原則は日本の国是であります。しかし核兵器が持ち込まれているのではないかという疑惑を持っている国民 は多い。アメリカの、信頼できるかつての責任者たちは、「核兵器の日本への寄港、領海通航、陸揚げは非核三原則に含まれない」、「核兵器を積まぬ空母はな い」と明言しています。アメリカ当局は、日本に寄港する艦船の核兵器の有無については答えないといっています。日本政府は真実を明らかにしなければなりま せん。
 25年前、沖縄近海で米空母が水爆搭載機の転落水没事故を起こし、今年は空母ミッドウェーが火災事故を起した後、横須賀に入港しました。核兵器の事故の危険に国民はおののいています。
 私たちは、非核三原則の厳守とその立法化を強く求めます。日本政府は、防衛費の削減にも積極的に取り組まなければなりません。

4.原爆被爆者援護法の制定を。
 あの原子爆弾によって、人間のすべてが無残に破壊されました。今も数多くの被爆者が孤独、老齢、差別、原爆症などで心も体も生活も滅びゆきつつあります。
 戦争のためなら、どんな犠牲もやむを得ないというのでしょうか。この深刻な苦難を被爆者だけに背負わせてよいものでしょうか。
  原爆による無差別殺りくは、人道的立場から考えて国際法違反行為であります。日本は、サンフランシスコ平和条約によって対米賠償請求権を放棄しました。 従って政府は原爆被爆者に対して補償する義務があります。また不戦の決意を表明した日本国憲法をふまえ、核戦争拒否の姿勢を明確にさせるためにも、援護法 を制定すべきであります。

5.外国人被爆者に謝罪と援護を。
 戦後45年間、外国人被爆者は、実態さえ不明のまま放置されてきました。私たちの人道上の責任はきわめて大きいといわなければなりません。
 特に、当時の朝鮮や中国の人たちが残酷な植民地支配のもとに、強制連行され、非人道的扱いをうけ、異境の地で被爆して世を去り、あるいは年老いて、原爆症によって心身ともに破壊されています。
 私たちは速やかに謝罪し、実態を調査し、援護をしなければなりません。

 今ここ長崎の地に初めて国内の非核都市宣言自治体の首長が集まりました。核戦争が起れば都市は真っ先に破壊され、市民が最大の被害を受けます。都市は連帯して平和を築いていこうではありませんか。
 平和は人類が子孫に残す唯一の遺産であります。私たちは長崎市民平和憲章を実践し、長崎を地球上最後の被爆地としなければなりません。

 ここに、原爆でなくなられたみ霊のごめい福と、ご遺族、被爆者のご健康をお祈りし、新たな決意をもって、世界恒久平和実現のために努力することを長崎市民の名において宣言します。

8月9日
長崎市長 本島 等