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長崎平和宣言

 日本のみなさん、世界のみなさん、ナガサキの声を聞いて下さい。きょう原爆の日。

1.真珠湾攻撃から長崎原爆までを考えよう。
 あの太平洋戦争は、真珠湾攻撃に始まり、長崎原爆に終わった。内外二千数百万人の尊い生命を奪った。私たちは今戦争を心から反省し、犠牲となった多くの日本人と外国人のごめい福をお祈りしよう。
  長崎は昭和20年8月9日、人間がつくった原子爆弾によって人間とすべての生活を無残に破壊された。あの日から今日まで原爆症によって数知れない人たちが この世を去った。今も多くの被爆者が孤独、老齢、病弱、差別、そしてケロイド、血液疾患、悪性腫よう、それらによる肉体及び精神障害などで心も体も生活も 滅びゆきつつある。

2.長崎を最後の被爆地に。
  あの日、長崎市民は、原爆が地球人類を絶滅させる究極兵器であることをみた。しかも、あの時以来、核兵器は質量ともに増強され、もし核戦争が起これば人類 は絶滅の危機にさらされる。長崎はすべての核保有国に絶対悪の核兵器を直ちに廃絶し、速やかに核実験の禁止を求めるものである。

3.日本を核兵器から守るために。
 日本政府は核抑止の考え方を改め、非核三原則の立法化とアジア・太平洋地域の非核地帯化に努めるよう訴える。
  非核三原則は国是であるが、核兵器は持ち込まれていると信じている国民は多い。アメリカ政府は日本に寄港する艦船の核兵器の有無については答えない。信頼 するアメリカ人は、核兵器の日本への寄港、領海通航、陸揚げは非核三原則に含まれないと明言している。昭和40年(1965年)12月、沖縄近海で米空母 より水爆搭載機が転落水没事故を起した後、横須賀港に入港したといわれる。事前協議を待つまでもなく、真実への解明の努力は国民に対する政府の義務であ る。
  また、世界において中南米、南太平洋は非核地帯化され、ヨーロッパにおいてはINF(中距離核戦力)全廃条約が締結され、東西首脳の折衝、草の根運動の高 まりによって、東西ヨーロッパの国際軍縮は一歩ずつ前進しつつある。しかるに海洋配備のINFはアジア・太平洋地域に集中し増強され、まさにこの地域は世 界の核の最前線基地である。今こそ非核三原則の立法化、アジア・太平洋地域の非核地帯化に積極的に取り組むべきである。

4.世界の都市は、平和の拠点となろう。
 今、ここに第2回世界平和連帯都市市長会議へ世界の市長たちが集まった。
 ひとつひとつの都市が長崎の被爆の実相をみて、核時代における都市の役割りを考え、世界平和実現のため、各都市が連帯することを誓うものである。

5.地球の未来を守るために。
 軍事費の世界的増大は、財政の危機と民衆の生活を極度に圧迫している。
 さらに、飢餓と貧困、人権抑圧と差別、南北格差の解決が叫ばれて久しい。しかし、前進はない。また、世界の環境の汚染・破壊、資源の浪費は許されない状況にある。
 今や、われわれは、地球の未来を守るために勇気をもって立ち上がらなければならない。

6.今、われわれが求めるもの。
日本政府に対して
 (1)被爆者のために速やかな国家補償の精神に基づく援護法の制定を。
 (2)外国に住む日本人および外国人被爆者に、国内の被爆者と同等の援護措置を。
 (3)長崎、広島の被爆者、また核実験や原子力発電所等で被曝した世界の人たちのために国際医療センターの設置を。
国連と世界の国々に対して
 国連と世界の国々は、平和こそ人類が子孫に残す唯一の遺産であることを心に刻み、子供たちに核兵器の脅威と平和の尊さを教えることを。

 原爆殉難者のみ霊の安らかであることを念じ、長崎の全市民が心を一つにして、核兵器廃絶と世界平和実現に向かってまい進することを宣言する。

8月9日
長崎市長 本島 等