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長崎平和宣言

 日本の皆さん、世界の皆さん、ナガサキの声を聞いて下さい。
 きょう41年目の原爆の日を迎えた。あの一発の原爆が、長崎の上空にさく裂して街を完全に破壊し、すべての生物を焼き尽くし、まさに地獄の様相を呈した。あの日から今日まで、何万人の被爆者が、苦しみつつ無念の思いを残して死んでいったことだろう。
 そして、いま、広島と長崎で被爆してなお生き続けている全国37万人の被爆者と多くの遺族が心も体も、暮らしも苦しみの中に年老いてゆく。
 長崎は、あの日、原爆が、人間が作り出した、人類全滅の恐ろしい兵器であることを知った。
 しかし今日、核兵器を含めて世界中に軍備拡大は進み、武器を生産し、使用する人口は、驚異的に増加し、まさに地球は武器を満載して自転しているといわなければならない。人類はいまほど深刻に自滅の危機に直面したことはない。
 しかし、第1回軍縮特別総会以来、軍縮への進展は何ひとつ見られず、危機はますます増大した。
 健全な経済活動と平和への努力が失われたところに、世界の飢餓も、道徳の退廃も生まれたものである。
 米ソ両国が、互いに軍備の優位を保とうとする限り軍縮の話し合いは失敗すること、軍事費を増やせば、国の安全が増すという考え方は、逆に危機感を高めるということをわれわれは知った。
 今年4月ソ連チェルノブイリ原子力発電所からの死の灰は、十日あまりで地球を取り巻いた。農作物だけでも東ヨーロッパを中心に大きな被害を与えた。
 私どもは、この教訓を核戦争の防止に向けての、国際世論の中に生かさなければならない。
 国連は第3回軍縮特別総会を早急に開催し軍縮と平和を、統一された行動プログラムとして積極的に決定し、採択すること、また平和や安全保障についての国境を越えて広がりつつある都市と、民間組織や市民運動を積極的に支援すべきである。
  次に今日世界は否応なく、米ソのペースに同調せざるを得ない状況をつくりだしている。しかし唯一の被爆国としてわが国は、非核三原則を厳守し国際平和年の ことしを契機として、核兵器廃絶へ向かって米ソ首脳会談の早期実現、核実験の即時停止、宇宙軍備拡張の防止、非核地帯の設置、国際医療センターの設立、被 爆者援護の確立に真剣に努力すべきである。
 特に中曽根首相にお願いいたしたいのは、軍縮交渉の場を、ニューヨーク、ジュネーブだけでなく長崎、広島にも誘致していただきたいこと、世界の子供たちの教科書に、原爆の惨状を誤りなく書きこんでいただきたいことであります。
  長崎は昨年広島とともに、第1回世界平和連帯都市市長会議を開いた。また米ソ両国は、日本からの平和使節団の受け入れを約束してくれた。今や世界中の平和 を求める都市は数限りなく増え続け、特に平和市民団体も国境を越えて大きなうねりとなってきた。都市も平和組織も前進のために手をつなぐ時である。草の根 の豊かな土壌に新しい世界への力が生れる。
 ここに原爆で亡くなられた方々の御霊安かれとお祈りし、遺族の方々の平安と被爆者の皆さん方のご健勝をお祈りします。
 長崎は被爆者の心を心として核兵器廃絶と恒久平和に向かってさらに努力することを宣言する。

8月9日
長崎市長 本島 等