長崎の皆さん、日本の皆さん、そして世界の皆さん、今日、38年目の悲しい原爆の日。
私たちは原爆で亡くなられた御霊の安らかないこいと、年老いた被爆者の健康を願い、また、長崎こそは世界最後の被爆都市でなければならないと心から訴えるために、ここ原爆の丘に集まりました。
ああ、7万数千人の命が奪われ、あらゆる建物が瓦礫となりました。人の肉がちぎれて飛び散り、乳飲み子は焼け死んだ母親の乳房にすがりついたまま、人々は水を求めて川にのめり込んだまま、息絶えました。
それはまさに人類の滅亡を思わせる残酷な光景でした。
私は、昨年ニューヨークの第2回国連軍縮特別総会に、今年ジュネーブの国連主催「核兵器・現代世界への脅威展」に出席し、核兵器廃絶、世界恒久平和実現を 強く訴えました。そして、核兵器廃絶、世界恒久平和実現を強く訴えました。そして、平和へのうねりの大きな高まりと、それにもまして、核戦争の危機を肌で
感じたのであります。
米ソ両大国をはじめとする核保有国の指導者の皆さん、すべての人類を数十回も殺すことのできる核兵器の貯蔵がどうして必要でしょうか。直ちに核兵器の実験と生産をやめて下さい。
地上から、空中から、海上から、いつ発射されるかもしれない核兵器におびえながら、平和がいつまでも続くというのでしょうか。
日本政府は「非核三原則」の中の「核を持ち込ませず」に疑いをもっている人々に誠意をもって答えて下さい。私たちは、武装した外国艦船の出入に大きな不安 を抱いております。日本の国土とその周辺を非核武装地帯とすることに力を注いでください。また、昨年、鈴木前首相が第2回国連軍縮特別総会で提唱した「核
軍縮の最優先」「国連の平和維持機能の強化、拡充」を一刻も早く推進してください。
日本の皆さん、私たちは後遺症に苦しみ、年老いていく被爆者に国家補償による援護の確立を強く訴えてきました。暖かいご支援をお願いします。
長崎の皆さん、私たちはあの原爆の恐ろしさを忘れることができません。全市民が力を合わせ、「平和は長崎から」の声を全世界に送りましょう。また、被爆者の皆さんが積極的に原爆の残酷さを証言して下さい。
さあ、被爆者も、教育者も、母親たちも、そして、すべての国民が、平和への行動に立ち上がるときです。私たちの一人一人が平和をしっかり考え、勇気をもっ て発言するときです。人間のすべての生活が平和の基礎の上に成り立っていることを多くの人たちに伝えましょう。ただ、平和への草の根運動は常に立場や考え
方の相違を認めあう寛容の精神によって支えられなければなりません。
最後に私は、米ソ両大国に被爆の実相を訴え、相互不信の打開のために平和使節団の派遣を提唱いたします。
また、日本と外国の被爆者のための国際医療センターの設置が必要であります。その実現に力を結集しましょう。
ここに、被爆38周年原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を迎え、原爆殉難者のごめい福と原爆後遺症に苦しむ被爆者の健康と平安をお祈りするとともに、今こそ、核兵器を地球からなくし、世界の永遠の平和を実現するために、市民こぞって力強く歩き続けることを宣言いたします。
8月9日
長崎市長 本島 等 |