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長崎平和宣言

 日本全国の皆さん、世界の皆さん、ナガサキからの声を聞いてください。
 長崎は、この7月23日、思いがけない大水害に襲われ、3百人の方々が尊い命を失いました。
 私たちは、これらの方々のご冥福を祈りつつ、悲しみのうちに原爆の日を迎えました。
 思えば37年前、ただ一発の原爆によって、子供も、大人も、おとしよりも、外国の人も、7万有余のかけがえのない生命が一瞬にして奪われました。
 見渡す限りの死の廃墟、川は沸騰して血と脂がとび散り、屋根瓦も、道ばたの石ころもとけました。
 人々は熱線でやけどし、爆風がそのやけどの肉をちぎり、はぎとっていきました。皮膚がたれ下がり、ボロをまとったような負傷者の群、地をはう人、呻きもだえ水を求める人、爆圧で叩きつけられ腸がとびだした人たちが巷にあふれました。
 一人の少年は両親のなきがらを焼いた土の上に涙を流し続け、一人の少女は粗末な空きかんに父と母の遺骨を入れて学校に通いました。
 まさに地球滅亡の姿、人類皆殺しの地獄絵図であります。
 今、無限の悲しみにくれつつ、厳粛に思うことは、原爆の残酷さと死の恐怖を体験し、苦しみと絶望の極限に立つ者こそが、誰よりも戦争を完全に否定し、心から平和を求める境地に到達し得るものであるということを。
 今日、ここ、原爆の丘に集まった私たちは、声を大にし、決意を新たにして、次のことを強く訴えます。

1、日夜、生命の不安におびえている被爆者の皆さん、今後、地球上のどこにも、決して核兵器が使われないために、皆さんの悲惨な体験を積極的に証言してください。
また、教育者と母親の皆さん、核兵器をなくし、完全軍縮と平和を実現することが、人類が未来に生き残る唯一の道であることを子供たちに教えてください。

2、 長崎市民の皆さん、第2回国連軍縮特別総会を契機として、核兵器反対草の根運動は、地球上に大きなうねりとなりました。世界の反核、軍縮の署名は1億人に も達しました。私たちは国の内外にさらに強く、広く平和運動を燃え上がらせ、世界を包む民衆の声にそだてましょう。長崎はその運動の原点として力を結集 し、第3回国連軍縮特別総会へ向けて核兵器廃絶、世界恒久平和実現の道を開きましょう。

3、全国民の皆さん、被爆後37年をへて、年老いた被爆者は孤独の中で死の恐怖とたたかっています。これらの方々に平和のあかしとして、国家補償の精神にのっとり、被爆者援護の確立のために深い理解と協力をお願いいたします。

4、 鈴木総理大臣にお願いを申し上げます。世界最初の被爆国として核兵器廃絶、世界恒久平和実現のため、国民の先頭に立ってください。また外国政府に強く働き かけて下さい。特に第2回国連軍縮特別総会で演説された「核軍縮の最優先」「国連の平和維持機能の強化、拡充」が具体的に推進されるよう尽力して下さい。 また非核三原則を堅持するとともに、日本本土とその周辺を非核武装地帯とすることを宣言してください。

5、 核兵器を毎日生産している米ソ両大国をはじめ、すべての核保有国の指導者に申し上げます。核兵器の拡大競争は、絶望と破滅の世界を作ることになります。今 のままで人類に未来があるでしょうか。核兵器廃絶への具体的一歩をふみだすために、核兵器実験の禁止と生産の停止を直ちに実現するよう、誠意と信頼をもっ て話し合ってください。

 原爆殉難者の御霊よ、あなた方の安らかないこいをお祈りいたします。原爆後遺症に苦しむ被爆者の皆さん、あなた方の悲痛の叫びがきこえます。ご健康を心からお祈りいたします。
 原爆は絶対に使われてはなりません。長崎は地球上最後の被爆都市でなければなりません。
 今こそ、核兵器廃絶、世界恒久平和実現に向かって、全市民こぞって直進することを内外に宣言します。

8月9日
長崎市長 本島 等