長崎市 > 平和・原爆 > 長崎平和宣言 > 過去の平和宣言 >

長崎平和宣言

 長崎の皆さん、日本全国の皆さん、そして全世界の皆さん。
 きょう8月9日は、悲しい長崎原爆の日です。
 私たちは、原爆で亡くなられた数多くのみ霊のごめい福を祈り、またいまなお後遺症で苦しむ被爆者を励ますために、そして再び世界に核戦争を起させないことを誓うために、この原爆の丘に集まりました。
  年老いた被爆者、被爆者の2世・3世、遺族、小中高生、市民、そして全国から、また外国からたくさんの皆さんが参列して、花を供え、水を献じて、鎮魂と平 和への決意を新たにしています。式典に参列できない寝たきりの方、一人ぼっちの方も、手を合わせてお祈りしていることでしょう。
 いまわしいあの焦熱地獄が、きのうのことのように思われます。悪魔のような熱線・爆風・放射線は、親兄弟も、親しい友達も、隣人も、そして長崎にいた外国人の命も一瞬のうちに奪い、幼稚園・学校・会社・商店・工場は、廃墟となりました。
 あれから36年、被爆者の悲痛の叫び声は押しつぶされ、原爆の悲惨さ、その傷跡も忘れ去られようとしており、戦争そのものが風化しつつあります。
私の声の届く限りのすべての皆さんに申し上げます。8月9日を心に刻んでください。私たちは、国家補償による被爆援護の確立を要求し続けております。
 特に孤独・老齢化が進み、死を目前にした被爆者の実情に、国民の深い理解と協力をお願いします。
 社会の担い手も、戦争の経験のない若い世代に代わりつつあります。これらの人々に「原爆の悲惨さ残酷さをどう伝えるか。」「80年代の平和へのエネルギーをどうかもし出させるか。」これが、私たちに負わされた課題といえましょう。
 そこで、特に、教育者の皆さんにお願いしたい。
 核兵器をなくし、完全軍縮の実現こそが、人類が未来に生き残る唯一の道であることを、子供たちに、すべてに優先して教えて欲しい。平和こそ、私たちが子孫に残すただ一つの遺産なのです。
  世界の人々の平和を求める声は強く、1978年の国連軍縮特別総会でも多くの国々の関心が高まり、また、本年2月来日したローマ法王ヨハネ・パウロ2世 は、平和アピールの中で、「過去を振り返ることは、将来に対する責任を担うことだ。」と指摘し、全世界に平和の力強い叫びとして伝えられました。
 しかし、いつまで続くのか。核兵器の拡大競争と核兵器を持つ国の増加は、恐怖の均衡のもとに破滅へ向かう絶望の世界と言えないでしょうか。
 核兵器を造る国々の人々に訴えます。私たちは、今まさに、人類滅亡の淵に立っております。核兵器の生産をやめ、その費用の一部を使えば、世界各地の数億人の飢えと、第三世界の貧困は解消されるでしょう。
次に考えなければならないのは、日本の国是としての非核三原則の一つ『核兵器を持ち込ませず』が揺らいでいることです。今日核の寄港、通過があったと信じている多くの人々の声に耳を傾けてください。
鈴木総理大臣は、直ちにこのことに対処して真実を国民に知らせてください。
 廃墟の中、絶望と飢えに耐えながら、戦争放棄と永久の平和確立を誓った日本国憲法の精神を思い起し、将来にわたって核兵器の廃絶、完全軍縮、恒久平和を国是として積極的に外交を進め、決してどの国をも敵視しない国の方針を打ち立ててください。
 また、来年の第2回国連軍縮特別総会に向けて、世論を高め、対策を練り、実り多い結果をもたらすよう努力してください。
 特に、第1回国連軍縮特別総会の行動提起に従って、日本本土とその周辺を非核武装地帯とすることを宣言してください。
 ここに、被爆36周年原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を迎え、重ねて原爆殉難者のごめい福と原爆後遺症に苦しむ生存被爆者の健康と平安とをお祈りするとともに、世界恒久平和の実現に向かって直進することを、全市民の名において内外に宣言します。

8月9日
長崎市長 本島 等