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長崎平和宣言

 あの忌わしい原爆の洗礼を受けてから、今日ここに33年目を迎えた。
 身をもって惨禍を体験した我々被爆市民は全世界に向かって核兵器の廃絶と世界の恒久平和の実現を訴え続けてきた。
 しかるに、世界の現状は我々の願いにもかかわらず核軍備競争を更に激化させ、国際間の対立と紛争は絶えず、今なお地球上から戦争の影をぬぐい去ることはできない。
 今更ながら、世界平和の維持の困難を思い知らされると同時に誠に遺憾にたえない。
 原爆によってもたらされる死の恐怖は、長崎・広島の被爆者のみが知っている。その原爆を上回る核兵器の脅威を思うとき、我々は地球上にその存在を許してはならない。
  この度、国連史上初めての軍縮総会が開催されたが、襲いくる核戦争の危機に、漸く世界各国が目覚めたものと考える。日本政府は、この軍縮総会において、核 兵器廃絶を前提として核保有国の責任を追及し、包括的核実験の禁止・通常兵器の国際移転制限・軍事費の削減などを主張し、世界平和へ向けての提案がなされ た。
 私は、一昨年に引続き、再度広島市長とともに被爆者を代表してニューヨークに赴き、この国連軍縮総会に出席し、また幾多の障害を克服して国連本部内で原爆の悲惨さを示す写真展を開催するなど、世界の恒久平和を実現するよう強くアピールしてきた。
 また、我が国を初め、世界各国からの平和を希求する民間代表団は、国連に結集して核兵器廃絶と全面軍縮に向けて行動した。
 今回のこれらの行動は、世界の良心を呼び起こし、新しい世界平和への胎動が始まったものと信ずる。
 国連軍縮総会が、このような国際世論をふまえて、複雑な国際情勢の中で、軍縮への意思、方向を確認し得ることができたことは世界平和に一脈の光明を見出した思いで、被爆者として喜びとするところである。
 世界各国の指導者は、このことを十分に認識し、戦争による人類自滅の危機を回避すべく、核兵器の廃絶のみならず、一切の軍備の縮小に向かって直ちに立ち上がるべきである。
 ここに、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を迎えるに当たり、殉難者の御冥福を祈り生き残った被爆者の援護が国家補償の域にまで高められるよう一層の推進を図るとともに、決意を新たにして世界平和のために努力することを、長崎市民の名において世界に宣言する。

8月9日
長崎市長 諸谷 義武