長崎市は、今ここに32回目の原爆被爆の日を迎えた。
あの日、一発の原子爆弾によって、我が美しき長崎の街は瞬時にして焦土と化し、数万の尊い生命が失われた。
辛うじて生き残った者も、今なお、その恐ろしい傷跡を見つめ、原爆後遺症に苦しみ、襲いくる死の不安におびやかされている。
原爆の惨禍を身をもって体験した長崎市民は、核廃絶の願いをこめて、地球上に再びこの悲劇を繰り返すことのないよう、全世界の人々に訴え続けてきた。
しかし、世界の現状を見るに、核保有国は増加し、自国の防衛と安全とを口実に依然として巨大な量の核兵器を蓄積し、さらに新型兵器の開発を競うなど、平和崩壊の危機が増大しつつあることは、まことに遺憾である。
これはまさに人類を破滅に導く愚かな行為であり、被爆市民として怒りをもって抗議するとともに、世界各国の合意に基づいてこれらの行為を即時に停止し、一日も早く平和への願いが実現することを切望するものである。
私は、昨年11月広島市長とともに、国際連合本部に赴き、被爆市民の体験と、原爆の非人道性を世界の諸国に訴え、核兵器廃絶と全面軍縮について具体的措置がとられるよう強く要請してきた。
この長崎、広島市民の熱意に応えて、本式典にアメラシンゲ国際連合総会議長閣下及びワルトハイム国際連合事務総長閣下代理としてマイケル・クラーク国際連 合広報センター所長の御来臨を頂いたことは、まさに画期的なことであり感激に堪えない。初めてここに国際連合代表の本式典参加が実現したことは、国際連合
が核兵器廃絶と全面軍縮の実現に向って大きく前進したものと受け止め大いに意を強くする次第である。
世界平和への道のりはなお遠いが、長崎市民の平和に対する願いは、かならずや世界の人々の良心を動かし、この地球上に平和が招来されるであることを確信する。
ここに原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を迎えるに当り、原爆死没者の御冥福を祈り、被爆者の援護強化をめざすとともに、世界平和達成のため、さらに決意を新たにして努力することを、長崎市民の名において宣言する。
8月9日
長崎市長 諸谷 義武 |