われわれ長崎市民は、今、ここに、原爆被爆30周年を迎えた。
昭和20年8月9日午前11時2分。
人類史上、かつて見たことのない原子爆弾の惨禍を、身をもって体験した長崎市民は、「平和は長崎から」を市民の悲願として、核兵器の廃絶と、核実験の全面禁止を叫び、人類永遠の平和を、広く、全世界に訴えつづけてきた。
あの日から三十年。
国際社会の現実は、あまりにもきびしく、平和を願うわれわれ被爆市民の悲願は、常に踏みにじられてきた。
核大国による核実験は、繰返し強行され、日増しに激化する核軍備競争は、核拡散に拍車をかけている。
今や、世界の核保有量は、地球上の人類を幾度となく全滅させることができるものであり、核戦争による人類破滅の危険が増大しつつある今日、人類は、繁栄と幸福の道をえらぶか、全滅の道をえらぶか、その選択を迫られているのである。
われわれ長崎市民は、今こそ、総決起し、核兵器による惨苦の経験者として、「人類が存続するためには、核兵器は勿論、戦争そのものを廃絶しなければならない」ことを強く全人類に訴え、世界平和実現のため、特別の使命を果たすべきであると考える。
平和は、人間の心の中にはぐくまれるものである。
われわれは率直に思う。
あの日の、あの悲しみと苦しみを、そして、今なお、後障害に苦悩する被爆者の心情を、そのまま、ありのままに、世界のすべての人々が知ったとき、核は廃絶され、平和な社会が実現すると確信する。
今年8月5日、被爆30周年を契機として、世界で唯二つの被爆都市、広島市と長崎市の間で、「平和文化都市提携」が実現したことは、この意味で、極めて意義深いものがある。
お互いに、協力一致。被爆都市としての使命を果たしていかねばならない。
今年は、特に、海外原爆展もアメリカで実現し、新聞やテレビにより、全米に対し、原爆の悲惨と、世界の恒久平和実現を直接訴えることができた。この波紋 が、やがて、次の波紋を呼び、大きな輪となって、世界の人の心の中に浸透し平和希求への限りない運動として発展していくことを心から念じている。
本日、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典にあたり、心から殉難者の冥福を祈り、被爆者援護の一層の前進に努力することを誓うとともに、広島市との連携を深め、全市民うって一丸となり、人類永遠の平和確立のため、更に決意を新たにして、力強く邁進することとを、ここに宣言する。
8月9日
長崎市長 諸谷 義武 |