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長崎平和宣言

 長崎市は、本日8月9日、被爆29回目の運命の日を迎えた。
 原爆の惨苦を身をもって体験した長崎市民は、真夏の空に紅く映ゆる夾竹桃の花の色にも、あの日の血の色を感じ、亡き父母を、吾が子を、肉親を思いおこし、核兵器の恐怖と、はげしい怒りにふるえている。
 核兵器を廃絶せよ。
 核実験を全面禁止せよ。
 われわれ44万長崎市民は、被爆市民の血の叫びとして全世界に訴え続けてきた。
 しかるに、長崎市民の願いは無視され、核実験に対するはげしい世論の高まる中で、相次いで核実験は強行されている。
 許しがたい行為である。
 核の現実は、明らかに平和を求める国際世論に逆行している。
 核実験は、最近、ますますその回数を増し、その貯蔵量は増大し、更にまた、われわれの悲願に反し、核開発をめぐる諸国の動きなど、核保有国は拡大の一途をたどり、限りない核の拡散は、今や、世界に新たなる緊張と恐怖を刻々と高めつつある。
 核兵器使用は人類自滅への道である。
 今こそ核保有国は勿論、全世界の国々が人類の英知を結集、世界平和の理念に立脚し、核兵器の使用、実験、製造、貯蔵の完全なる廃絶のため、いかにあるべきかを行動で示すべき時である。
 本日、被爆29周年の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を実施するにあたり、心から原爆殉難者のごめい福をお祈りするとともに、謹んで御霊に申し上げる。
 長崎市は、最近における度重なる核実験に抗議するため、このたび、核実験抗議団を編成し、核保有国政府に対し長崎市民の悲願を直接行動で訴えた。
 われわれ長崎市民は、皆様のご遺志を体し、一致団結、もって被爆者援護の一層の充実を期するとともに、すべての核実験の即時停止と恒久平和の実現のため、挺身することを誓いここにこれを全世界に宣言する。

8月9日
長崎市長 諸谷 義武