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長崎平和宣言

 顧みれば、昭和20年8月9日。
 長崎に原子爆弾が投下されてから、28年が過ぎた。
 あの日、多くの生命が一瞬にして奪われ、目を覆う惨禍の跡は、今なお、人の心に、からだに、痛ましい原爆後遺症となって焼きついている。
 人間の歴史に、かつてない残虐の殺りくをもたらした原爆。
 長崎市民として、決して忘れることのできないその日を、今年もまた今日、ここに迎えた。当時の惨状に思いをいたす時、あらたなる憤りと言いようのない悲しみを覚える。
  理由のいかんを問わず、人類自滅へつながる原水爆は、廃絶しなければならない。長崎市民は原爆の被災者であり、核兵器の残酷さを肌で知っている。それだけ に「平和はナガサキから」を市民の悲願として、核兵器の絶滅と、人類永遠の平和を、広く全世界に訴え続けてきたのである。
 科学技術の目覚しい進歩発達は、現代社会の繁栄の原動力となっているが、一面において、核兵器を頂点とする軍備拡張の推進力ともなっている。一歩誤ると、遂には、人間が人間を破壊し、絶滅へ追いこむ危険性があることを疑わない。
  日中国交の正常化、ベトナム和平協定の締結等国際情勢は、いくらか雪解けの機運にあるとはいえ、なお、いまだに、ごく最近においてすら、核実験が行われて いる。われわれの切実な抗議や世界の多くの国々からの中止の要請があるにもかかわらず、それは無視され、強行されている。人間、だれしもが願う平和への悲 願をふみにじるものとして、断じて許すことはできない。しかし、わたくしたちは、決してあきらめない。
 われわれは、人間のもつはかり知れない英智と、平和を愛する心の深さを固く信じている。
 『戦争を二度と繰り返してはならない』ということばの尊さを知るわれわれ長崎市民は、いつまでも、どこまでも、真に平和な人類社会の実現の日まで、人々の心に平和の砦が築かれるまで、ねばり強く訴え努力していかなければならないことを痛感する。
 ここに、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典にあたり、心から殉難者の冥福を祈り、被爆者の援護にいっそうの努力を誓うとともに、43万長崎市民は全国民と共に手を携え、更に平和を愛する世界の人々と共に、平和のため、決意をあらたにして邁進することをここに宣言する。

8月9日
長崎市長 諸谷 義武