歳月はめぐって、ここに、27年目の運命の日、8月9日を迎えた。
あの日わが長崎市は、一瞬にして地獄のちまたと化し、7万有余の尊い生命を失った。かろうじて生き残った人々も、今日なお深刻な後遺症に悩み、あるいは突如として襲う原爆症の不安に脅かされ続けている。
原子爆弾の惨禍を身をもって体験したわが長崎市民は、戦争終結以来、世界の恒久平和を念願し、年ごとに世界の各国に向かって平和の実現を訴えつづけてきた が、今なお、地球上の一部で砲声がとどろき、殺りくが繰り返され、更には、核軍備の強化をきそって、人類自滅の方向に拍車をかけている感があることに、限
りのない憤りと焦燥を覚えるものである。
宇宙開発の確実性が、ますますその度を加えつつある今日、地球上の同じ人間と人間が、憎しみ合い殺し合うことのむなしさ、そして人知の限りを尽くしてつく りあげた科学技術が、その人間を大量に殺りくし、瞬時にして、すべてのものを破壊し尽くす残忍な凶器と化することの恐ろしさに、あらためて眼を開くべき時
である。
得ることなく、失うことのみが多い戦争に対する反省は、必ずや人間の英知と努力によって実を結ぶことを確信するものである。
かかるが故に、毎年毎年、平和の叫びを繰返し続けてきたが、ここに27回目の原爆被災の日を迎えるにあたり、更に思いを新たにして原爆爆死者のめい福を祈 り、被爆者の援護に一段と努力をいたす決意を強くするとともに、原爆被爆都市の市長という使命感に立ち、43万市民とともに、全世界に向かって世界平和旬
間の実現を提唱し、人類の恒久平和を強く強く訴えるものである。
全市民は腕を組み、スクラムを組んで、その実現のために力強い行進を踏み出していることを、ここに宣言する。
8月9日
長崎市長 諸谷 義武 |