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長崎平和宣言

 歳月はめぐって、また、ここに、8月9日を迎えた。あの日、あの時から数えて二十有六年。しかし、年々、心を新たにし、決意を新たにして迎える、今日の8月9日である。
  浦上原頭上空にさく裂した一発の原子爆弾は、人と人とが憎しみ合い、殺し合う戦争の残酷さ、非情さの極地を人類に示し、これが第二次大戦を終結させる直接 の原因とはなったが、しかし、今なお、地球上のどこかで砲声がとどろき、殺りくが繰り返されていることは、まことに遺憾のきわみである。
  わが、長崎市においては、あの日、一瞬にして、7万余の尊い生命が奪われた。かろうじて、その災禍をまぬがれた人も、放射能に起因する病魔や、死の黒い影 におびえながら来る年、来る年の8月9日を迎え、そして送ってきた。昨年の今日この日を迎えた人ですでに亡き数に入った人も多い。あれを思いこれを考える 時に、二度とこの悲惨さが繰り返されないよう、世界に向って、恒久平和を力強く訴えるのは、わが長崎市民の義務であり使命でなければならない。
 原子爆弾、水素爆弾をつくり出した科学技術は、たとえそれが前人未踏のすぐれたものであったとしても、そこには人間への愛情が欠除し、ただ、有るものは、平和と幸福に対する反逆や、核兵器を絶滅し世界の平和を実現し得ることを堅く信じ、心から期待するものである。
 ここに、原爆殉難者のめい福を祈り、被爆者の援護にいっそうの努力をいたす決意を強くするとともに、全市民と手を携えて、世界の恒久平和のため力強くまい進することを宣言する。

8月9日
長崎市長 諸谷 義武