長崎市 > 平和・原爆 > 長崎平和宣言 > 過去の平和宣言 >

長崎平和宣言

 思えば24年前、ここ浦上原頭にさく裂した一発の原子爆弾は、瞬時にして荒涼たる廃墟を現出し、数万の尊い人命を奪い去った。
 幸にして生命をながらえた人々も原爆症に苦しみ、或いはいつ襲われるとも知れない原爆病の黒い影に日夜おびえながら、年々この原爆祈念日を迎え、或いはそれをまたずしてこの世を去っていった。
 長崎市民は原爆の悲劇を身をもって体験したがゆえに、原水爆の禁止と世界の平和を強く強く訴えてきた。
 しかし世界の情勢はわれわれの悲劇とうらはらに、核兵器の拡散がうかがわれ、地球上のどこかで砲火や銃声の絶ゆる日がない。
 一方宇宙開発の進歩は、人類の夢とされた月世界への着陸を実現した。それは人間の崇高な英知の発現であり真理探究の賜物である。
 われわれの知性は人間の滅亡へのみちを選ぶに非ずして、人類永遠の平和と繁栄へのみちを選ぶためにこそ真理探究の努力を傾注させなければならないことを今ほど痛感するときはない。
 本日の原爆犠牲者慰霊並びに平和祈念式典にあたり、殉難者のめい福を祈り、かつ、被爆者の援護に万全を期する決意を新たにすると共に、全市民と手を携えて世界の恒久平和確立に向って更に力強くまい進せんことをここに宣言する。

8月9日
長崎市長 諸谷 義武