長崎市は本日、新たなる涙とともに原爆被災の悲しむべき日を迎えた。
この日、午前11時2分、浦上上空にさく裂した強烈な爆発による惨状は筆舌に尽くしがたく、罪もない市民十万の尊い生命を絶った。
以来二十有二年、身をもってあの恐怖と惨禍にさいなまれた長崎市民は、巡りくる年毎に悲憤の情を深めて平和を乞い願い心からの祈りを、在天のみ霊に捧げてきた。
さりながら、東西の相入れざる不和は果てしなく続けられて、民族間の流血の争いが繰り返され、あまつさえ、核保有国は、その製造と、実験を強行して戦力の 誇示を競い、世界の危機感は更に増大しつつあって、つかの間の平安をも許されず、われらの悲願である人類の福祉と平和の確立とを著しく妨げている。
われら長崎市民は、あの悲惨な体験と今日に到るも更に続きつつある業苦から、いかなる戦争をも否定し、殺傷、破壊のための核兵器の製造、保有、実験には、強い怒りと憎しみとを覚える。
恒久平和実現への、われらの悲願達成への道、いまだ遠しといえども、われらは世界人類のえい智を信ずるが故に、原爆被災者の悲惨さを体してくじけることなく、たゆむことなく、これが具現に渾身の努力を捧げることをここに誓う。
8月9日
長崎市長 諸谷 義武 |